オンライン授業のこと(2)録音機材のこと②

前回はフィールドレコーダーのオーディオ・インターフェースへの転用について書いたので、今回はその続きという感じで、他の録音機材について書いておく。といっても、音響に関する専門的なことなどは分からないので、調査機材をオンライン教材作成に転用するという観点から書いてみる。

というか、前回書き忘れたけど、オンライン教材で肝心なのは、現時点ではおそらく映像よりも音声だと思う。容量的にも目指すべきは、YouTube方向ではなくオールナイトニッポン方向なんじゃないかな。知らんけど。

社会調査の授業でインタビューを学生たちに課していて、自分でも研究の過程でインタビューを行うので、レコーダーというのは僕の教育研究にとって最も重要な機材。そもそも民生用レコーダーの普及は社会学を変えた一因であるのだけれども、それはともかくとして、大学院の頃は、調査の性質からして目立たない方が良いので、マイクロカセットレコーダーを使っていたものの、途中からMDに替えて、MDとICレコーダーの併用時期を経て、今はICレコーダーのみ。これは調査を行ってきた人の一般的な経路だと思う。ICレコーダーになったことで、結果的にオンライン教材が作りやすくなったのは助かる。

で、レコーダーをどう使うのか。前回のようにマイクを備えたPCを使って、パワーポイントのファイル上で音声を一発録りして保存するのではなく、ICレコーダーに吹き込んだものをPCにコピーして、それをパワーポイントのファイルの上に載せるということになる。なので、ICレコーダーはPCに直接USB接続が出来るものが便利だ。マイク録音に比べて面倒に思うかもしれないけれども、これだとマイクがないデスクトップPCを使っている場合にも、オンライン教材を作成できる。僕も近々MacBookProをMac miniにリプレースする予定なので、このやり方が一つの選択肢にはなる(Zoom F1を使うとは思うけど)。いずれにしても多くの人が調査や講義の録音などのためにICレコーダーは持っているだろうから、わざわざ新しい機材を買わなくていいというのが利点。

でも実はもっとお金がかからないのがあって、スマホを使う方法。iOSでもAndroidでも、ボイスレコーダー用のアプリがあるので、それで録音をする。それらにはたいてい編集機能もあるので、もし必要があればトリミングなどの編集をすればいい。その後、それらを無料のクラウドに上げるか、自分宛にメールに添付して送り、PCでダウンロードしてからパワーポイントの各スライドに挿入すれば良いわけだ。これだと追加投資はいらないので、院生の懐にも優しいと思う。

パワーポイントでは、前回の作業の②と同様、「挿入」→「オーディオ」で今回は「オーディオをファイルから挿入」して、そのファイルを選べば各スライドに音声が載るので、これを自動再生にしておいてMP4ムービーに書き出せばいい。

録音ファイルはAndroidだとmp3かwave、iOS だとおそらくMP4オーディオになるだろうけど(iPhoneではないのでよくは知らない)、とくに問題はない様子。ただ、waveは音質は良いけど大きいので、受講生の利便性を考えたらmp3にするのが適切だと思う。僕もパケット代のことを考えて、オンライン授業用のページに、パワポ動画とともに、同内容の「スライドのPDF+音声のmp3ファイル」を教材として置いている。

以下は余談。ICレコーダーにも、前回紹介したZoom F1のような多機能なものや、宅録で使えるようなミュージシャン方向のものから、PCに接続できない簡易なものまでいろいろある。今まで何台も買い換えてきた経験からすると、思いのほか重要なのはマイクかも、と思っている。数人で話すときと対面でインタビューをするときとはマイクを換える必要があるし、座って話を聞くときと、歩きながら聞くときとでは、やはり換える必要がある。映像を撮りながらであれば、ラベリアマイク(ピンマイク)を使うこともありうる。

おそらく、「大勢で座って」というのと「対面で歩きながら」という両極を想像して、2種類あるといいんじゃないかと思う。前者は、写真でいうと右から二番目のaudio-technicaのAT9745みたいな平面型のもので、今だったらAT9921あたりがいいかも。後者もいろいろあるけど、最近よく使っているSONYのPCM−A10だったら(一枚目の写真の手前)、そのままか、屋外では風よけのウィンドスクリーンをつけるだけでいい。ただ、以前はメインに使っていて、今はバックアップ用に併用しているICD-UX565では(一枚目の写真の奥)、場合によってはAT9911を使う。これにもウィンドスクリーンがあるから。歩きながら話を聞くと(調査中にはよくある)、風の音が入ってうるさいことも多いので、こういう小物は割りと大事かもしれない。

 

 

オンライン授業のこと (1)録音機材のこと①

新型コロナ感染拡大状況に対応するために、2020年度春学期の授業が全てオンライン化されることになった。まさかこんなにあっという間に世界中に感染症が拡がるとはほとんどの人は思っていなくて、誰もがいろいろ準備不足のまま、新学期を迎えることになった。

当然のことながら、オンライン教材作成の訓練を受けていないほとんどの大学教員は、手持ちの材料で対処しなくてはならず、同じようにオンライン授業になれていないであろう(映像を用いる予備校経験者ではない)比較的多くの学生たちも、これに対応していかなくてはならないのだが、であれば、大学が求めているような対面授業の代替物ではなく、対面授業とは別物、もう一つの選択肢として準備するしかないんじゃないかなと思っている。教員も学生もお互いに少しずつ交渉しながら、オンライン授業ってこんな感じ、という複数の様態を各所で作りあげていくというか。facebookではすでにオンライン授業に対処するためのグループが立ち上がり、1万人を越える人たちが登録して情報のやりとりが始まっている。

すでに授業を始めている教員の中には勢い余って、これからはオンライン授業が盛んになって、その技術を持った教員が複数の大学で教えるようになり、大学教員の淘汰が始まる、とか物騒なことを書いたりしている人もいるけれども、なかなかそんな風にはならないだろう。大学はカルチャーセンターではないから。でも経済性を考えてそうするところが出てくるかもしれない。大学できちんと勉強していない人たちなら、なおさらそうしそうだ。

それはともかく、今回久しぶりにブログを再開しようと思ったのは、オンライン授業を構成するのにあたって、いろいろ記録しておく方がいいだろうと思ったから。とくに、僕は社会調査をやっていたり写真を撮っていたりするので、標準的な文系大学教員に比べて機材などを持っているはずで、これがオンライン教材を作るのに少し役に立ちそうである。であれば、とくにこれから大学教員になるような大学院生たちに、少しは助けとなる情報を伝えることが出来るんじゃないかなと思ったのだ。facebookの書き込みだと「友人」にしか読めないので、ブログにした方がよさそうだし。

まあ、長い前書きはそんな感じで、とにかくオンライン教材作成の話。講義形式の授業で、一番簡単で標準的な方法は以下の通りだろう。

①パワーポイントで授業ファイルを作成する

②各ページに説明用の録音ファイルを埋め込む(メニューの「挿入」→「オーディオ」から出来る)

③それらの録音ファイルは自動再生に設定しておく

④全ファイルをムービーに書き出す

最近のノートPCはカメラもマイクも標準装備なので、大抵の場合はこれで出来る。ただし、僕の場合はちょっと問題が。いつも使っている古いMacBookPro(mid 2015)のマイクだと、余計な音を拾ってしまうのだ。家人が台所で歌っている声とか、近所の電車の音とか。で、マイクを外付けしようと思ったのだけれども、MacBookProにはマイク端子はない。が、実はヘッドフォン端子に、マイク付きヘッドフォン(4芯のもの。コールセンターでつかっているようなヘッドフォン)を挿せば、マイクが使えるようになる。これが一番簡単な方法。ヘッドフォンを使いたくない場合には、USBマイクを買う。ということで、聞きやすい音で録音をしてファイルを作ろうという人は、マイクを買いましょう。

ここまでは当たり前なのだけれども、社会調査をやっている人であれば、教材作成のときしか使わないようなUSBマイクを買う以外の選択肢もある。僕の場合は手持ちの調査機材で使えないものがないかを考えてみたら、あった。ZoomのF1というフィールドレコーダー。これは少し値段が張るけど、とっても有用性の高いレコーダーで、ガンマイクで録音できるだけでなく、服などにつけるラベリアマイク(いわゆるピンマイク)も接続できるし、比較的広範囲に録るステレオマイクも接続できる。いずれのマイクも極めて優秀で、何よりマイク感度がそのままダイヤルで調整できるので、非常に便利。しかもデジタルカメラで映像を撮る時に接続できれば(カメラにマイク端子があれば)、開始と終了にテストトーンも出せる便利な代物。テストトーンが出せれば、映像と音声を編集する時に同期がしやすいのだ。

で、ここが重要なのだけど(前振りが長いね)、F1はPCとUSB接続した時に、オーディオ・インターフェースとして使える、つまり、USBマイクの接続装置となるのである。ガンマイクを使って録音すると志向性が高く、余計な音を拾わずに済むので、非常に良かった。

もっとも、調査はしないし、写真や映像撮影よりは音楽演奏が趣味という人は、こういう、ついでにインターフェースになるものよりも、オーディオ・インターフェースそのものを買った方が良いかもしれない。ダイナミック・マイクをつなげば、ヴォーカルを録るような形で音声が録れるから。コンデンサー・マイクは周囲の音を拾うから、僕のような環境には向かない。このタイプの機材についてはまた改めて書こう。

ただ、F1だと、PCの前に座ってパワーポイント動画を作成する以外にも、たとえば、板書をする授業をデジタルカメラで撮影して教材を作るといった場合にも活躍するのがいい。その機材や方法についてもまた今度書くけれども、調査をする人たちにとっては選択肢の一つとしてあってもいいと思う。調査音源を良い音で残すのにも最適だ。