うちの学部のオンラインの講義は、原則オンデマンドでやるということに決まっている。ライブ配信はない。そもそも受講人数からしてライブ配信はかなり無理があるし、やれといわれても困るだろう、多くの教員は。そこで授業ファイルの作成となるわけだが、僕自身は、各回を前半と後半とに分けて作成している。これは初回からの方針だけれども、これにはわりと合理的な理由がある。面倒くさいからではない、たぶん(笑)。
1コマ90分全部を1本の動画で作りあげるのは、作る方も見る方も、おそらく最初は拷問に近いと思うのだけれども、もし全ての授業がそうであれば、だんだんとそれに適応していくようには思われる。オンライン予備校なんかはおそらく60分などでそれを実現しているはずだから。しかし、授業環境自体が教員によってバラバラであって、その条件が思いのほか重要だろう。多くの教員がAdobe Premiere ProやFinal Cut Proなどのソフトを使って長い動画を見やすく作ってくるとは思えないので、だとしたらそういう凸凹の作成環境(学生の受信環境ではなく教員間の凸凹状況)に向かい合う学生がむしろしんどいのではないだろうか。そういう状態で、90分きっちり作ってしまったら、かなりきついんじゃないかと思う。凸凹がより大きくなってしまうので。なので、そのような凸凹に対応した適応プランがいるわけだ。(こういう全てがオンラインであるということが継続するような状況でのオンライン教育技法の研究はこれまでは不可能だったんじゃないかな、そもそも全てがオンラインという環境がなかったのだから。)
そこで最初のファイルは、前半は教員の顔出しの短動画を最初に置いて、続いてパワポの動画で学ぶように構成した。パワポ動画は短め。後半は手元のテキストを見ながら音声または動画の解説を聞く形になる。これで1セット。
2回目は同様の形式で、初回よりは動画の時間を長くした。たぶんそろそろ他の講義も受けて慣れてきた時期のはず。といっても、前半と後半に分けるという原則は維持して前半はパワポ、後半は前回と同様の文献の解説。3回目以降もその形式は維持しつつ、顔を出して説明する機会を増やしたりiPadで解説したり、文献を読んでいく際にもトリビアというか関連する話で全体を膨らましつつ構成した。
このような形で、3回目くらいまでで、1ユニットが終わる感じに構成した。あとは課外に1セット補講的なファイルを置く予定。数個のユニットで授業全体を構成すると、おそらく話が理解しやすいのではないかと思う。実はこれは物語を構成する方法でもある。このような構成方法は、認知的な仕組みというよりも慣習的なものだと考えられるが、いずれにしても馴染みやすいものだろう。
そこで問題は(というほど問題はないかもしれないが)、やはり短動画。ずっとパワポに音声というわけにはいかないかもしれない。適応という意味で。うちには幸いなことにいろいろ機材があるので、それらを順番に用いることにしている。画角が変わったりボケ具合が変わって眠くならないのではないかと勝手に思っている。撮影場所もあえて変えたりして。で、一眼のデジカメを使った短動画は次回に回すとして(実は最初の短動画はデジカメで撮った)、3回目の講義で使ったのはGoProである。
GoProは、実は仕事の都合で簡単に映像を作る必要があり、昨年度に導入したもの。まさかこんなことで役に立つとは思いもよらなかった。
実はGoProはそもそもアクションカムなのでWebカメラなどには適さず(単体ではその機能もない)、そのままだと教材の動画作成には向かない機材である。そもそも教材用という目的だったらOsmo Pocketを買うだろう。ただ、GoProはスマホに映像を送って見ながら録るシステムを搭載しているので、工夫すれば教材作成は出来るし、Osmo Pocketより広角なので、その点は使い勝手が良い。とはいえ、YouTuberのように自撮り棒で撮影しながら歩くわけではなく、むしろ撮影状況を手元で確認しながら録る感じ。であれば、どういう風にスマホを固定するのかが問題となる。
そこで、逆に考えて、スマホを固定した上にGoProを載せる工夫をした。動画の機材ではRigを組むといって、機材のまわりに補助的なフレームを配置する方法があるのだが、たまたま手元にあったSmall Rigのマジックアームという部品を用いて、写真のようにテーブルトップ三脚の上にGoProを固定した。こうすると、三脚をたたむと自撮り棒のようになるので、動きながらでも録れるのが便利である。まあ、そんなことはしないけど。
ただ問題は音声で、GoProのマイクも悪くはないが、不満があるときには、ICレコーダーを準備して同時に録音しておくと、後で編集するときに音を置換することが出来て便利。実際に録ってみたが、5分ほどの動画を撮影して、映像と音をPremiere Proに放り込んで同期させてレンダリングすれば、まあ、20分くらいで完成した。
でもまあ、手間といえば手間だよね、結局。