フィルムっぽい画

ようやくフィルムを諦める方向で機材やレンズをいろいろ試行錯誤していて、そのさい、フィルムっぽい画にするにはどうしたらいいのかというある種倒錯した考えがムクムクと湧いてくる。「ある種倒錯した」というのは、「フィルムっぽい画」そのものは、実はフィルムしかなかった時代にはなかった感触であり考えだから。実際に欲しいのは、ああいう色であったり、ああいうタッチであったりするわけで、だったら手持ちの機材でそれを実現するしかないかなあと思いながら、ようやくいろいろ試してみる。しかしそれはそれとして、フィルムで撮っていたフィールドの続きをデジタルで撮るのはやはり難しい。なんか合わないんだな。

SONY ILCE-7M2 w/Biogon 28mm 2.8 ZM
SONY ILCE-7M2 w/Biogon 28mm 2.8 ZM
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オールドレンズ(6) CARL ZEISS Biogon 28mm 2.8 ZM

Carl Zeiss Biogon 28mm 2.8ZM Zeiss Ikonの定番の一つはBiogon 28mmにTMAX400(モノクロフィルム)のセットで、歩留まりが非常に良く、お気に入りだった。しかしすでにモノクロフィルムは気軽に使えるような値段ではなくなってしまった。そこでデジタルではどうかと考えて、ここのところ、あえてモノクロで撮っている。するとどうか。まず、カラーよりも周辺減光が目立つような気がする、が、そこはあまり気にしないことにする。センサーで撮るのだから仕方ない。ただ、ミラーレスの映像ファインダーであるEVF(Electrical View Finder)では、一眼レフの一般的ファインダーであるOVF(Optical View Finder)やZeiss Ikonなどのレンジファインダーとは異なり、撮影時にすでに視野がモノクロである。最初はどうかと思ったが、実はこれはちょっと楽しい。撮る前から写真なのだ。

SONY ILCE-7M2 w/Biogon 28mm 2.8 ZM
SONY ILCE-7M2 w/Biogon 28mm 2.8 ZM

オールドレンズ(5) KMZ Jupiter-8 50mm F2

KMZ Jupiter-8 50mm F2 いわゆるロシアンレンズの歴史はドイツの東西分割とその状況への適応の物語として興味深い。Jupiter-8は戦前ツァイスのゾナー50mm2.0というレンズを始祖とする東側のコピーと言われてはいるが、コピーというより適応である。西側のゾナーは材料の工夫で球面収差を補正したものの、東側のジュピターはそのまま収差が残り(もしくは収差を残し)、戦前の柔らかい描写のままという。実際、独特の色味と柔らかさがある。このレンズはLマウントで確かウクライナから中古で買った。一体どういう人が使っていたのだろうか。

SONY ILCE-7M2 w/Jupiter-8 50mm F2
SONY ILCE-7M2 w/Jupiter-8 50mm F2

オールドレンズ(4) CANON LENS 85mm F1.9 Type II

CANON LENS 85mm F1.9 Type II  ニコンのAi Nikkor 85mm 2.0S というレンズが好きで一時期はF3とともによく持ち歩いていたのだが、このレンズは同じ85mmでもそれよりも僅かに明るいF1.9というのだから、時代(発売は1958年)を考えるとすごい。ということは、かなり無理しているともいえるわけで、中心部でさえ絞らないと甘くて使えないと評される。しかし絞るくらいなら他のレンズを使う方がいい。例によって回転角が大きいのが困るのだけれども、その柔らかい画は悪くないと思う。

SONY ILCE-7M2 w/CANON LENS 85mm F1.9 II
SONY ILCE-7M2 w/CANON LENS 85mm F1.9 II

オールドレンズ(3) CANON SERENAR 100mm F4 Type I

CANON SERENAR 100mm F4 Type I  オールドレンズはガラスの材料やコーティング、レンズの枚数のために最新のレンズとは違った描写になる傾向が強い。オールドレンズ愛好家はそれらの描写がとても気になるらしい。このレンズはある意味最もシンプルなトリプレット(3群3枚)のようで、抜けが良くすっきりした画だ。ただし、モノクロ時代(戦後直後)のレンズであるために色の調節が行われておらず色が薄い。まあ最近はカメラの描画設定をヴィヴィッドにすればいいのだけれども。それよりもフォーカスリングの回転角が大きいのがちょっと困る。でもこのすっきり感は捨てがたい。

SONY ILCE-7M2 w/SERENAR 100mm F4 I
SONY ILCE-7M2 w/SERENAR 100mm F4 I

オールドレンズ(2) CARL ZEISS Planar 50mm 2.0 ZM

Carl Zeiss Planar 50mm 2.0 ZM  コシナのプラナーはいわゆるオールドレンズではない。オールドレンズと呼ぶには少なくともディスコンになっていなくてはならないはずだが、これは現行モデル。コンピュータで設計されているはずなので、デジタルにも余裕で耐えられる。ではどうして取り上げるのかというと、このレンズはオールドレンズ同様MFで、しかも他のオールドレンズと異なり、フォーカスリングの回転角が小さくて使いやすいという特徴があるから。AFかMFかということよりもフォーカスリングの回転角が大小の方が大事だと教えてくれる。MFは慣れればどうってことない。そして何よりもそのレンズの画が好きかどうかというのが最も大事だと教えてくれる。Zeissらしい発色とコントラスト、画像のキレがいい、でもキレすぎない、味のあるレンズ。

SONY ILCE-7M2 w/Planar 50mm 2.0 ZM
SONY ILCE-7M2 w/Planar 50mm 2.0 ZM

オールドレンズ(1) CANON LENS 50mm F1.4 II

CANON LENS 50mm F1.4 Type II  アダプタを使っていわゆるオールドレンズを使うのは、遊びとしてはとても楽しい。楽しすぎて自分で一体何をやっているのか分からなくなる。もしSNSなどがなければ決してしないような試し撮りばかり増える。ちょっと作業っぽいが楽しい。しかし出てきた画を見てこのレンズは自分の好みに合いそうだというのが分かってくると、闇雲に試し撮りをするのではなく、どのあたりが美味しいか、焦点距離やF値を確かめつつ確定していく。すると、他人には分からないかもしれないけど自分は楽しいという場所に行き着ける。それも楽しい。

SONY ILCE-7M2 w/CANON 50mm F1.4 II
SONY ILCE-7M2 w/CANON 50mm F1.4 II

まだ希望をもっていた自分に気づく

各地ではいまださまざまなモノクロの写真展が開かれているが(そして好きで自分で行ったりもする)、その多くが昔撮影したものだし、昔のプリントばかりなのは、どう考えてもあんまりだろう(それを喜んでいる自分に驚く)。しかもKODAKの大幅値上げに続いて、4月からはILFORDも大幅の値上げ。これらを総じて考えると、モノクロ銀塩はほぼ終わったと(ようやく)いえる。ともすればデジタルに飽いた一部のマニアが手をつけるだけの分野になろう。今更と言われるかもしれないけれども、ああ、そうか、という気持ちになる。そしてまだ希望をもっていた自分に気づく。しょうがないので、機材を再活用できる方向へのシフトを考える。何はともあれアダプターの活用だ。しかし中判がいかんともしがたい。

ILCE-7M2 w/Biogon 28mm 2.8 ZM
SONY ILCE-7M2 w/Biogon 28mm 2.8 ZM